• 岩笛とは

岩笛は、約5000年前の縄文時代中期頃に使用され始めたと推測される楽器です。
さまざまな自然現象によって小石の一部分に穴が穿かれ、天然自然の楽器としてこの世に生まれたのが岩笛です。やがて縄文人たちは巧みな技術を用い、自然への畏敬をこめて自分たちで岩笛を作り始めたのでした。

もともとが天然自然の石でしたから、他の管楽器のような指穴などありません。しかし穴が一つあいただけのこの石で、1オクターブを上回る音程と旋律を吹き分けることができるのはまさに奇跡の業(わざ)とも言えるでしょう。

  

  • 岩笛の音色

岩笛の音は 素朴なものです。
人工的な楽器のように自由自在に旋律を奏でてくれるものではありません。
しかし、その音色を聞くと、あたかも故郷の母の懐に抱かれたような安らぎを憶えるのは不思議です。古くからこの楽器と親しんだ日本人のDNAを刺激するばかりではなく、その音色を聞いた多くの外国人が「なつかしい音だ」という感想を述べるのは不思議なことです。

それは人間もまた自然の一部に過ぎず、人間の英知も所詮は自然現象のひとつでしかないことを教えてくれるようにも思えます。岩笛の音色があらゆる人間の心の奥底を揺さぶり動かすのは、すべての人間がおなじ自然を共有していることの表れではないでしょうか。東洋思想の「身土不二」(身体と大地は一元一体である)は、まさにこうしたことを指しているのでしょう。

  

  • 岩笛と神道

自然そのものを神として敬ってきた日本では、古くから「不思議な天然自然には不思議な力が宿る」と考えられており、この天然自然の楽器の奏でる霊妙な調べには「音霊(おとだま)」が宿るとされてきました。

この「音霊」の霊力を借りて神霊を呼び迎える儀式は、明治期の本田親徳によって「鎮魂帰神の作法に必要な用具たるべし」と示されているように、現在においても一部の教派系神道に伝承されています。また、その高い周波数がもたらす域内浄化作用は、科学的研究の対象にすらなろうとしています。

   

  • 現代の岩笛

現在では、その素朴な音色を求める方が増えており、天然自然に穿孔した石は求めても得られないようになってしまいました。そこで人間の手によって穴を穿った石が提供されますが、ただ石に穴をあけさえすれば岩笛になるということではありません。そうした石は音を出さないか、あるいはいかにも人工的で無感動な雑音を出すばかりです。自然の摂理と造化の妙を体得した製作者でなければ生み出すことが出来ない楽器、それが岩笛なのです。

もともとが自然の小石ですから、色も形も大きさも、二つとして同じものはこの世に存在していません。同じように演奏しても同じような音色を返しません。そこがまた岩笛の楽しい奥深さでもあります。

当研究所では古神道の祭式にこの岩笛吹奏を積極的に取り入れています。
神道の根本が「自然との一体感を高めること」にあるとすれば、これほど神意に叶う楽器は他にないでしょう。
その音色は自然(神)を喜ばせ、その場にいる人間すべてを一体感の渦に巻き込む不思議な力を示してくれるのです。