神葬祭

神式葬儀(神葬祭)について

日本の古い葬儀の様式

神葬祭の推進

神道と仏教 葬儀の違い

葬儀・死生観の違い

諡 と 戒名(法名・法号)

家庭での祀り方

葬儀を行う施設

墓所・墓石

遺族・弔問の作法

祭詞とお経

■  神葬祭の流れ

古来の「死の文化」に目覚めよ 世界日報掲載記事 (平成22年8月29日)

時代が変える葬送儀礼 -神道葬祭、微増の兆し- (H16年4月)

 

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神葬祭は日本古来の信仰に基づいた葬儀といえます。故人を祖霊のもとへ送り、家の守神となってもらうための儀式です。

葬儀は故人のためだけに行う儀礼ではありません。葬送の儀式のうちに残された人々が“死”を受け止め、別れに対し心の準備を整えます。

当研究所では創立以来、神道文化啓蒙の一環として神葬祭の普及に努めてまいりました。私共は日本人の根底にある真の祖霊信仰の精神性を呼び戻し、いま主流となっている形骸化した葬儀を見直し、簡素にして荘厳な神道葬祭の復権を世に問おうと思っております。

日本の古い葬儀の様式

日本の古い葬送儀礼の様子を、『記・紀』のなかでうかがい知ることができます。

私たちの祖先は仏教伝来以前から、死者を弔う儀式を行っていたのです。

・『日本書記』 伊弉冉尊
伊弉冉尊、火神を生みたまふ時に、灼かれて神退去りましき。故れ 紀伊國の熊野の有馬村に葬(かく)しまつる。土俗(くにびと)此(こ)の神の魂(みたま)を祭るに、花時(はなあるとき)には、亦花(はな)を以(も)て祭り、又 鼓吹幡旗(つづみふえはた)を用て歌ひ舞ひて祭る。
※ 土俗   土地の人々

・『古事記』 天若日子
故れ、天若日子が妻 下照比賣の哭かせる聲(こえ)、風のむた響きて天に到りき。是に天なる天若日子が父、天津國玉神(あまつくにたまのかみ)、また其の妻子(めこ)ども聞きて、降り來て哭き悲しみて、乃ち其處(そこ)に喪屋(もや)を作りて、河雁(かはがり)を岐佐理持(きさりもち)とし、鷺(さぎ)を掃持(ははきもち)とし、翠鳥(そに)を御食人(みけびと)とし、雀(すずめ)を碓女(うすめ)とし、雉(きざし)を哭女(なきめ)とし、如此行ひ定めて、日八日夜八夜を遊びたりき。

※ 岐佐理持     死者の食物を頭上に載せ、棺の傍に従い行く者
※ 掃持      喪屋を掃除するために、箒を持って行く者
※ 御食人     喪屋で死者に饌を供へる者
※ 碓女             死者へ供へる米をつく女
※ 哭女             葬送の時の泣き女
※ 日八日夜八夜      幾日も幾夜も

神葬祭の推進

現在のお盆やお彼岸の習俗は、6世紀に伝来した仏教が我が国古来の祖霊崇拝を取り入れ、お盆やお彼岸といった、日本独自の仏教行事に発展させたものです。私共は日本人の精神性の基底にある神道に基づいた神道式葬祭を社会に伝え、さらに広めていきたいと努力しております。

いま、喪主を務める主流は団塊世代です。終末思想が多様化するするなか、直葬や樹木葬や散骨という形態と共に神道式の葬儀も増えています。増加の理由は、少子高齢化で、葬祭で確認しあった地域共同体の崩壊、寺と檀家との関係の希薄化、戒名は不用の意識の変化、さらに従来型の仏式より葬儀費用が掛からず神道儀礼の厳粛さと尊厳性が見直された結果と思われます。

神葬祭を推進する神職の会では、神職養成講座の受講生二百数十名を中心に、神葬祭を広める意欲ある神社の神職、神道系葬儀を執り行う教団の祭事担当の祭員と協調し、葬祭奉仕のための祭事講習を開催しております。

◇神道と仏教 葬儀・死生観の違い
神道 神葬祭は日本古来の信仰に基づいた葬儀です。地方の習慣により儀式に若干違いもあります。故人の生前の業績を述べ遺徳をしのびつつ、祖霊となって遺族を守ってくれるよう願う儀式です。故人の霊魂は祖先の霊とともに家族の守護神となります。
死後の世界と現世は連続するところに存在し、故人は正月・盆・彼岸・命日には現世とあの世の境界を自由に往来し、子孫の元に帰ることができると考えられています。
仏教 それぞれの宗派の教義・宗旨によって、葬儀の意義や儀礼、死生観に違いはありますが、概ね、輪廻転生思想に基づき、死んでから四十九日は中有(三途の川)にとどまり、その後、生前の行いによって、地獄あるいは極楽浄土、または再び人間として生まれ変わるとしています。
日本古来の民俗信仰や地方の習慣・習俗などを取り入れ、仏教本来の教義とは異なる、日本仏教独自の葬送儀礼を行っています。
◇神道と仏教 諡 と 戒名(法名・法号)
神道 諡(おくりな)
故人の姓名の下に、男性は〝大人命〟、女性は〝刀自命〟、或いは単に〝命〟などの尊称をつけます。幼児・少年少女・成人男女・老年男女別によって諡は異なります。料金はかかりません。
仏教 戒名(法名・法号)
本来は受戒した者が、その戒律を守る証しとして授かるものです。日本では、故人を仏門に入れるために戒名を授ける風習が生まれました。戒名料がかかります。
◇ 神道と仏教 家庭での祀り方
神道 御霊璽(ごれいじ)を祖霊舎(御霊舎)に安置して、家庭でお祀りすることにより、故人はその家の守護神となり子孫を守るといわれています。御霊璽は御霊代(みたましろ)ともいわれる故人の御霊が宿る依代(よりしろ)です。
神棚と同じように、米(洗米・ご飯)・酒・塩・水を土器に盛り三方や折敷に乗せお供えします。祖霊舎の位置が神棚より低くなるようにします。地方独自の祖霊舎の祀り方もあります。
仏教 宗派により祀り方に違いが有ります。位牌に戒名を彫り込み仏壇に安置して、礼拝の対象とします。位牌の起源は、中国の儒教の死者の官位姓名を記した「位版」だといわれています。日本には鎌倉時代に伝えられ、日本古来の依代の習俗と習合しました。
◇ 神道と仏教 葬儀を行う施設
神道 葬祭会館、自宅、公民館 など
神の鎮まる聖域であるため、神社の境内で葬祭を行うことはありません。
仏教 葬祭会館、自宅、寺院、公民館 など
◇ 神道と仏教 墓所・墓石
神道 神道式霊園や神道式の墓石もありますがこだわりません。
仏教 墓所…霊園、寺院墓地
墓石…宗派により、梵字など刻む文字に違いがあります。
◇ 神道と仏教 遺族・弔問の作法
神道 玉串奉奠があります。玉串に自分の思いを託し、御霊に捧げます。一般に二礼二拍手一拝の作法にて拝礼します。拍手は音を立てない忍手(しのびて)で行います。お数珠は使いません。また、お米を焼香のように使用するなど、地方によって異なる拝礼方法があります。
仏教 数珠を使い焼香・抹香が一般的ですが宗派により異なります。立礼焼香・座礼・回し焼香などがあります。
◇ 神道と仏教 祭詞とお経
神道 帰幽(亡くなること)されたご本人の経歴などを入れた祭詞(葬儀では祝詞といわずに祭詞)を奏上して幽界(かくりよ)に送ります。
仏教 弔うのにお経をあげますが、宗派によりあげるお経が異なります。

神葬祭は地方それぞれの慣習があるため、多少相違があります。

帰幽報告

氏神・神棚・祖霊舎にご家族が亡くなった事を奉告します。その後神棚封じ(前面に白い半紙を貼る)をします。神棚封じは五十日祭で解きます。

枕直しの儀

故人のお帰り先は、ご自宅か、葬儀を執り行う斎場などに直接ご入場されるかのどちらかになります。「神衣」と呼ばれる白い衣装を着せ、頭の向きを通常は北枕、または部屋の上位に安置し、枕元に守り刀を置きます。祭壇を設け、米・酒・塩・水の他、故人が生前好んだもの等を供えます。

納棺の儀

通夜祭の前にご遺体を棺に納めます。榊の葉に水をつけて口を湿らせる末期の水の行事を行うこともあります。

通夜祭 並びに 遷霊祭

故人の蘇りを願う往古の殯(もがり)の風習を現在に伝える儀式です。故人の側で生前同様に礼を尽くして奉仕します。遷霊祭とは、故人の御霊(みたま)を霊璽(れいじ)に遷し留める仏教には無い神道独自の儀式です。古くは通夜祭と遷霊祭は別々に行われましたが、現在では通夜祭に合わせて行われるのが慣例となりました。

葬場祭

故人に対し最後の別れを告げる仏教の告別式に相当する神葬祭の重儀です。神職が奏上する祭詞(祝詞)には、故人の略歴・功績、趣味などが織り込まれ、故人の御霊
(みたま)を和めます。現在では、近親者以外は通夜祭のみ参列する場合が多い為、通夜祭祭詞においても、故人の略歴等を奏上するようになりつつあります。

発柩祭

古くは神葬祭に先立ち自宅から出棺し、葬場に向かう際に行われた儀式です。現在では、葬場祭が終わり遺族や近親者が故人と最後の別れをした後、火葬場(又は墓所)へ向かう前に執り行います。最近では、この発柩祭を省略することが多くなってきています。

火葬祭

ご遺体を火葬に付す前に、火葬場にて行う儀式です。加具土神(かぐつちのかみ=火の神様)に委ねる祭詞を奏上します。

帰家祭

一般的には火葬祭を終え遺骨となり自宅又は葬祭場等にへ帰り、霊前に儀式が滞りなく終了したことを報告します。これより後は、御霊祭として行ないます。

埋葬祭

浄められた墓所にご遺骨を安置します。納骨祭に先立ち墓前を掃除しておきます。火葬後すぐに墓所にて納骨する場合や、火葬後ご遺骨を一旦ご自宅に持ち帰り五十日祭・百日祭の前後に行われます。

御霊祭

十日祭、二十日祭、三十日祭、四十日祭、五十日祭、百日祭、一年祭と続きます。仏式でいう初七日が十日祭、四十九日が五十日祭に当たります。地域によって異なりますが、二十日祭、三十日祭、四十日祭は、ご家庭で故人の好物や季節の物などをお供えし、ご家族で在りし日の故人を偲び、五十日祭(地域によっては百日祭)はご家庭又は会館・式場にて神職が執り行う例が多いようです。

合祀祭

仮御霊舎(かりのみたまや)にお祀りしていた故人の御霊璽(ごれいじ)を御霊舎(祖霊舎)に合祀する儀式です。五十日祭、百日祭、または一年祭後に執り行います。

 

世界日報掲載記事 (平成22年8月29日)

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古来の「死の文化」に目覚めよ

NPO法人「にっぽん文明研究所」 奈良泰秀 師 に聞く

人生の結末を締めくくる儀式「葬儀」の空洞化が進んでいる。少子高齢化や経済不況、戦後一貫した宗教性の衰退、さらには葬儀業者主導の葬式に対する反発などが背景にある。そこで、葬式事情に詳しく、神職として神葬祭を広めている奈良泰秀(ならたいしゅう)師に、最近の葬式事情と神葬祭について伺った。

(記事より抜粋)

 

神葬祭

神葬祭 祭詞奏上

いま、葬送儀礼が曲がり角にきている。

現在、喪主を務め、葬儀と墓を主に必要としているのは戦後の団塊の世代、ベビーブーマーだと言われている。敗戦後の復興に尽くした親たちの許で高度成長期に育ったこの世代は、新しい価値観を持ち、新しい世界の創造と、自分に適したライフスタイルを築く生活を追い求めて来た。この世代は葬儀についてもこれまでの習慣に捉われない個人の選択肢を増やし、自分なりの葬儀の概念を持つようになった。更には宗教不信や無関心に依る無宗教意識からか、宗教色の無い音楽葬、弔辞と献花、花のみの葬儀、散骨といった葬儀の多様化を進行させている。

もとより葬送と儀礼の形態は、その時代の諸相を反映しつつ変化して来ている。現在の世相に観られるバブル崩壊から続く不況感、核家族、高齢少子化社会といった外的要因は、必然的に葬儀の変容を促している。

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